退去費用の基本的な考えを学ぶことで、退去費用の請求が適切なものであるのかどうか判断できるようになり、過剰請求を退けることができるようになります。
目次
退去の基本的な考えを理解しよう
修繕が必要な損耗は貸主・借主のどちらが負担するべきか
貸主と借主の負担を考えるにあたり、損耗をまず3つに分けることで理解しやすくなる。
3つの分け方は国交省発行の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしています。
損耗は3つに区分される
賃借人の負担すべきものはどれか
①について
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものについては、賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたはずのものである。その為、賃借人は①について修繕等する義務はなく、費用は賃貸人が負担することとするのが妥当である。
②について
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものについては、賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたはずのものである。その為、賃借人は②についても修繕等する義務はなく、費用は賃貸人が負担することとするのが妥当である。
③について
賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるものは「故意・過失、善管注意義務違反等による損耗等」を含むこともあり、通常の使用により生ずる損耗とはいえない。したがって、賃借人には原状回復義務が発生し、賃借人が負担すべき費用の検討が必要になる。
また、同様に賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗が発生・拡大したと考えられるものは、損耗の拡大について、賃借人に善管注意義務違反等があると考えられる。したがって、賃借人には原状回復義務が発生し、賃借人が負担すべき費用の検討が必要になる。
もう少し具体的に説明すると、、
賃貸人の負担 | 賃借人の負担 |
・化粧直し等のリフォーム
・次の入居者を確保するための設備の交換 ・震災等の不可抗力による損耗 ・賃借人とは無関係な第三者がもたらした損耗 |
・故意による損耗、毀損
・過失による損耗、毀損 ・善管注意義務義務違反による損耗、毀損 ・その他通常の使用を超えるような仕様による損耗、毀損 |
借主の負担金額の決め方
では全額を賃借人に負担すべきなのか?
修繕等の費用の全額を賃借人が当然に負担することにはならないと考えられる。
根拠
経年変化・通常損耗は必ず前提になっており、経年変化・通常 損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで、賃借人が明け渡し時に負担すべき費用にならないはずである。したがって、このような分まで賃借人が明け渡しに際して負担しなければならないとすると、経年変化・通常損耗の分が賃貸借契約期間中と明け渡し時とで二重に評価されることになるため、賃貸人と賃借人間の費用負担の配分について合理性を欠くことになる
負担額の決め方
賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合 を減少させることとするのが適当である。
具体的には、耐用年数に基づいて経過時を考慮し、残存簿価1円まで償却する
ただし、例外もある
経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得ることを賃借人は留意する必要がある。
どんな場合?
具体的には、経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである。